【社労士通信】 by 今中社会保険労務士事務所

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2014年3月号:法改正と未払い残業代   『社長業について その1』

      2015/01/02

4月から始まる「産休期間中の社会保険料免除制度」

◆4月から制度スタート

仕事と子育ての両立支援を図るため、産前産後休業(原則、産前42日・産後56日)を取得した場合、育児休業の場合と同様に社会保険料の免除が受けられるようになります(被保険者分および事業主分)。

この制度の対象者は、今年4月30日以降に産前産後休業が終了となる方で、4月分以降の保険料から免除の対象となりますので、社内で周知しておくことが必要でしょう。

 

◆書類の提出時期・提出先

事業主による届出書類の提出時期は「被保険者から申出を受けた時」、提出先は「事業所の所在地を管轄する年金事務所」とされています。

今後公表される「健康保険・厚生年金保険 産前産後休業取得者申出書」を、「窓口への持参」「郵送」「電子申請」のうちいずれかの方法で提出します。

なお、添付書類は特に必要ないとのことです。

 

◆標準報酬の改定

産前産後休業終了後に報酬が下がった場合、産前産後休業終了後の3カ月間の報酬額を基にして、新しい標準報酬月額を決定し、その翌月から標準報酬が改定されます。

この場合、会社が「産前産後休業終了時報酬月額変更届」を提出しなければなりませんが、産前産後休業を終了した日の翌日から引き続き育児休業を開始した場合には提出することができません。

 

◆その他の留意点

被保険者が産前産後休業期間を変更したとき、または産前産後休業終了予定日の前日までに産前産後休業を終了したときは、事業主は速やかに「産前産後休業取得者変更(終了)届」を提出する必要があります。

育児休業期間中の保険料免除期間と産前産後休業期間中の保険料免除期間が重複する場合は、産前産後休業期間中の保険料免除が優先されます。

 

2014年度の各種保険料額(率)・年金額

 

◆雇用保険料率

1月27日に2014年度の雇用保険料率が発表されました。2013年と変わらず、下記の通りとなります。

・一般の事業…1000分の13.5(労働者負担=1000分の5、事業主負担=1000分の8.5)

・農林水産清酒醸造の事業…1000分の15.5(労働者負担=1000分の6、事業主負担=1000分の9.5)

・建設の事業…1000分の16.5(労働者負担=1000分の6、事業主負担=1000分の10.5)

 

◆国民年金保険料額・前納額

1月31日の厚生労働省の発表によると、2014年度の国民年金の保険料額は1月当たり210円引き上げられ、1万5,250円(月額)となります。

また、保険料を口座振替で前納した場合の額は、6カ月間で9万460円(1,040円割引)、1年間で17万9,160円(3,840円割引)、2年間で35万5,280円(1万4,800円割引)となります。現金納付またはクレジットカード納付による前納の場合は、上記とは金額が異なるため、注意が必要です。

 

◆国民年金・厚生年金の年金額

2014年度の年金額(老齢基礎年金)は満額で6万4,400円(月額)となり、2013年度に比べマイナス475円(0.7%の引下げ)という結果になりました。

この年金額は、2014年度の年金額改定に用いる名目手取り賃金変動率(0.3%)よりも物価変動率(0.4%)が高くなるため、名目手取り賃金変動率(0.3 %)によって改定され、算出されたものです。

なお、2013年9月までの年金額が本来支給額よりも高い金額に据え置かれていたことを受け、2015年4月までにその特例水準を解消するため年金額が引き下げられます。当初予定では2013年10月分からマイナス1.0%、2014年4月分からマイナス1.0%、2015年5月から0.5%の引下げとする予定でしたが、上記賃金変動率と合わせて0.7%の引下げとなっているものです。

なお、厚生年金の年金額(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)は、22万6,925 円(前年度比マイナス1,666円)です。

受給者の受取額が変わるのは、通常4月分の年金が支払われる6月からです。

 

「子育て世帯臨時特例給付金」の支給について

 

◆「子育て世帯臨時特例給付金」とは

これは、4月1日から消費税率が8%へと引き上げられることに伴い、家計への影響が大きいとされる中・低所得者を対象に、負担軽減策として設けられた給付です。

住民税(市町村民税)非課税世帯が対象の「臨時福祉給付金」と、児童手当の受給世帯が対象の「子育て世帯臨時特例給付金」の2種類あり、合わせて国民の4分の1強の約3,670万人が支給対象とされています。

しかしながら、両方の要件を満たしていても受け取れるのはどちらか一方ですので、どちらも対象となる方は「臨時福祉給付金」だけを受け取ることとなります。そのため、「子育て世帯臨時特例給付金」の支給対象となるのは、約1,270万人と言われています。

 

◆支給対象

今年1月時点で児童手当を受給している世帯が対象となります。つまり、中学3年生以下の子を持つ家庭です。給付額は、児童手当の額にかかわらず一律で子ども1人につき1万円とされ、1回限りの給付となります。

なお、子どもの人数と親の所得に応じて決まる「所得制限額」以上の所得があり、児童手当の支給額が5,000円の家庭は、今回の特例給付金の支給対象外とされます。

 

◆申請手続

原則として、支給対象者が、2014年1月1日時点の住所地の市区町村に対して支給申請を行うこととされています。

支給時期については各自治体の準備が整い次第支給することとされており、6月頃から受付を開始し、7月から9月にかけて口座振込みにより支給されるものとみられています。

なお、基準日以降に、支給対象者や対象児童の状況に変化が生じた場合の取扱いについては、検討中の部分もあるため、今後リリースされる情報にも注目する必要があります。

未払残業代請求の内容証明が急増中!

◆東京管内の割増賃金遡及支払額が17億円に

東京労働局から「監督指導による賃金不払残業の是正結果(平成24年度)」が公表されましたが、これによれば、東京労働局管内で、時間外・休日・深夜労働に対する割増賃金が適正に支払われていないとして是正勧告・指導され、100万円以上の遡及支払いになったのは125企業となり、その総額は17億円に上ったとのことです。

◆ネット上にあふれる割増賃金請求に関する情報

最近、主に元従業員から、未払残業代請求の内容証明が届く企業が非常に増えているようです。「あなたの未払残業代がすぐわかる!」といったような内容のサービスを謳うホームページや、残業代請求に関する内容証明のひな形を掲載するサイトも増えています。

これらを利用すれば、内容証明の作成・送付により、簡単に会社に対して未払残業代を請求できる時代になってしまいました。

 

◆会社としての対応は?

ある日突然、送りつけられた未払残業代の支払いを要求する内容証明。その内容ごとに、会社の対策は変わってきます。

まず、内容証明の送り手は誰か。内容証明の差出人が、従業員個人なのか、合同労組やユニオンなのか、弁護士等なのかにより、会社としての対応が違ってきますし、相手の事情や紛争が長期化するかどうかもある程度読み取ることができます。

例えば、従業員(元従業員)本人による場合、会社へのうっぷんを晴らしたいのか、お金が欲しい(お金に困っている)だけなのか、上司等に対する個人的恨みなのか等が判断できる場合があります。また、内容の完成度や要求の度合いにより、インターネットのテンプレートを使って素人レベルで作ったものなのかどうか等の情報がわかり、以後の会社のとるべき対応を考えるうえで参考になります。

いずれにしても、会社としては、必要な資料(タイムカード、日報、就業規則、賃金規程等)の収集・検討を行い、残業時間を確認し、そのうえで対応を行います。

 

◆日頃の労務管理が重要!

もっとも、未払残業代を発生させてしまう残業・労働時間管理を根本から見直さない限り、こうした内容証明が届くリスクはなくなりません。

「会社が未払残業代を請求された」という噂が広まれば、現在働いている従業員についても、その不満を爆発させてしまうことにつながる可能性も大いにあります。

今一度、自社の労働時間管理について検証してみてはいかがでしょうか。

 

事務所より一言

今月号は法改正等がありテーマの数が増えて3分で読めないかもしれませんがご了承願います。(旧事務所便りは3分で読めると謳っていました(笑))

『社長業について』

我々、社労士が関与する事業所は中小零細企業がほとんどですが、中には人事、賃金制度をを作成するために経営コンサルタント、経営セミナーへ結構な支払いをしたと聞くこともあります。

無駄とはいいませんが、社長はご自分の主観で評価を下してください、それを具体的に理由付けをして評価されればいいと考えます。ただし、ご自分も現場で仕事をしていることが大前提ですが。

 

 

 

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改正安衛法で義務付けられた「ストレスチェック」に関するQ&A ◆84の「Q&A」 先の通常国会で成立した改正法の1つに「改正労働安全衛生法」(6/25公布)がありますが、これに関連して、厚生労働省から「改正労働安全衛生法Q&A集」が公開されました。 改正項目のうち最も影響の大きいものは「ストレスチェック制度の創設」だと言われており、上記「Q&A集」でも84のうちの36(約43%)を占めています。   ◆ストレスチェックに関するQ&A 以下では、Q&A(抜粋)をいくつか見てみましょう。 【全ての事業場が対象となるのでしょうか?】 →ストレスチェックの実施が義務とされるのは、従業員数 50 人以上の事業場とされており、50 人未満の事業場については、当分の間、実施が努力義務とされています。 【全ての労働者が対象となるのでしょうか?】 →ストレスチェックの対象労働者は、一般健康診断の対象労働者と同じく、常時使用する労働者とする予定です。なお、派遣労働者については、派遣元事業主において実施していただくことになります。 【どれくらいの頻度で実施すれば良いのでしょうか?】 →今後、労使や専門家のご意見を聴きつつ省令で定めていくことにしていますが、健康診断と同様に、1年以内ごとに1回以上実施していただくことを想定しています。 【健康診断のように、実施を外部機関に委託しても問題ありませんか?】 →問題ありません。委託により実施する際には、ストレチェックの結果を実施者から直接労働者に通知する必要があり、労働者の同意なく事業者に通知してはならないことなどの点に注意してください。 【ストレスチェックは面談形式で行うものですか?】 →労働者の心理的な負担の程度を把握するため、労働者自身が該当する項目を選択するチェックシート方式で行う検査です。面談形式に限ることは想定していません。 【健康診断のように、ストレチェックを実施した旨の報告を監督署に行う必要があるのでしょか?】 →ストレチェックの 実施状況を把握するため、事業者には、労働基準監督署にその実施状況について報告していただく仕組みを設けること考えています。   ◆施行予定は来年12月? 今後は、平成27年2月~3月頃に省令・指針等が策定され、平成27年12月までに改正法(ストレスチェックの部分)が施行される予定です。   雇用保険の教育訓練給付金が拡充! 「専門実践教育訓練給付金」について   ◆「専門実践教育訓練給付金」創設 雇用保険の教育訓練給付金が拡充され、10月から新たに、専門性の高い資格取得について、「専門実践教育訓練給付金」が創設されます(2018年度末までの期間限定)。 対象は、厚生労働大臣が指定する、業務独占資格・名称独占資格の取得を訓練目標とする資格取得講座、中長期的なキャリア形成を支援する講座(企業などとの連携により最新の実務知識等を身につけられるよう教育課程が編成されている専門学校の職業実践専門課程、キャリアアップを目的とした専門職大学院)で、対象講座は今後も増える見通しとなっており、支給対象となる社員等も出てくるのではないかと思われます。 要件を満たせば、給付率が従来の「一般教育訓練給付金」(費用の20%、上限10万円)よりも大幅にアップしますので、制度の紹介をすれば喜ばれるのではないでしょうか。   ◆支給対象者は? 雇用保険に原則10年以上加入している方が利用できます。   ◆給付の内容は? 最長3年間にわたって支給され、給付率は費用の40%(上限:1年で32万円)です。 …

2014年1月号  非ブラック企業他

非ブラック企業!?「若者応援企業」って何?   ◆すでに4,000社以上が登録 いわゆる「ブラック企業」が話題となっていますが、厚生労働省の審査を受けて「非ブラック企業」のお墨付きをもらい、学生らにアピールする企業が増えているようです。 同省は今年4月、若者を積極的に雇用・育成する企業を認定する「若者応援企業宣言事業」をスタートさせましたが、今年10月末時点でこの宣言をした企業は4,375社に上っているそうです。   ◆「若者応援企業」の定義 「若者応援企業」とは、一定の労務管理体制が整備されており、若者のための求人を提出し、若者(35歳未満)の採用・育成に積極的であり、通常の求人情報よりも詳細な企業情報・採用情報を積極的に公表する中小・中堅企業のことをいいます。   ◆「若者応援企業」を名乗るには? 「若者応援企業」と名乗るためには、以下の基準をすべて満たしている必要があります。 (1)学卒求人など、若者対象のいわゆる「正社員求人」をハローワークに提出すること (2)「若者応援企業宣言」の事業目的に賛同していること (3)過去3年度分の新卒者の採用実績および定着状況などの就職関連情報を開示していること (4)労働関係法令違反を行っていないこと (5)事業主都合による解雇または退職勧奨を行っていないこと (6)新規学卒者の採用内定取消を行っていないこと (7)都道府県労働局・ハローワークで取り扱っている助成金の不支給措置を受けていないこと   ◆「若者応援企業」を名乗るメリット 「若者応援企業」を名乗ることで、企業にとって以下のようなメリットがあります。 (1)ハローワークに提出される通常の求人情報に比べて、より詳細な企業情報・採用情報を公表できるため、会社の職場環境・雰囲気・業務内容がイメージしやすくなり、より適した人材の応募が見込まれ、採用後の職場定着が期待できる。 (2)都道府県労働局のホームページで、就職関連情報も含めたPRシートを公表するため、会社の魅力を広くアピールできる。 (3)就職面接会などの開催について積極的に案内するため、若年求職者と接する機会が増え、より適した人材の採用が期待できる。 (4)「若者応援企業」の名称を使用し、若者の育成・採用に積極的であることを対外的にアピールすることができる。     「年次有給休暇」に関する最近の動向   ◆昨年の取得率は約47% 厚生労働省の発表によると、企業が昨年(2012年)、社員に付与した年次有給休暇(年休)は平均18.3日で前年と同でしたが、社員が実際に取得した日数は平均8.6日(前年9.0日)に減少し、取得率も47.1%(同49.3%)に低下したことがわかりました。 また、時間単位の年休が取得できる制度のある企業の割合は11.2%(同8.8%)と若干増えたものの、全体の1割程度しかないことがわかりました。 さらに、内閣府の調査からは、年休の取得が進まないのは、上司の意識(取得する部下を「仕事より自分の予定を優先」等と否定的に考える)が原因である実態が明らかになりました。   ◆「年次有給休暇算定の基礎となる全労働日の取扱い」の改正 年休に関連して、注意が必要な通達の変更が行われています。これは、裁判により解雇無効が認められた労働者が、復職後に年休取得を請求して出社しなかったところ、会社がその期間を欠勤として取り扱い、その分の賃金を支払わなかったこと等に関する最高裁の判決があったことによります。 労働基準法では、雇入れの日から6カ月の継続勤務期間またはその後の各1年度において全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、翌年度に決まった日数の年休を与えなければならないと定められています。 この出勤率の計算根拠について、「労働者が使用者の正当な理由のない就労拒否によって就労することができなかった日」を、年休の発生要件である全労働日に含まれると解釈したのがこの最高裁判決です。 この判決が出たことを受け、厚生労働省は、年休算定の基礎となる全労働日の取扱いを変更しました。具体的には、労働者の責に帰すべき事由によるとはいえない不就労日は、出勤率の算定にあたっては出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれるとしたのです。   …

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2015年(平成27年)№16号 マイナンバー制度のスタート

マイナンバー制度の概要 3月末の新聞に政府広報が入っていたと思います。 今年の10月から、あなたにもマイナンバーが通知されます。 個人に送られてくるのですが、法人にも法人番号が通知されます。 現時点で事業主が準備しておくべきことをお知らせします。 (1)従業員への制度周知(送られて来たら捨てない事) ・マイナンバーの収集が必要なこと(必要に応じて家族のマイナンバー収集もある) ・本人確認がいること (2)該当業務の洗い出し ・社内でマイナンバー関係事務に該当する業務は何なのか ・明確な仕訳を設けて運用していない業務の仕訳 (3)マイナンバー収集対象者の特定と注意点の確認 ・交付の対象は、日本国内に住民票がある者(住民票所在地の住所に送付される) 在留カードを持つ外国人、パート、アルバイト、役員も対象 顧問税理士、顧問社会保険労務士等にも提出してもらう (4)社内規定等の整備 ・個人番号収集用の様式の作成 ・個人番号の管理方法 ・就業規則の条文確認(マイナンバー取扱規程を別に定める場合の条文の引用) ・取扱規程の策定 ・運用管理者、事務担当者の教育、研修   個人番号の制限と罰則にも気を付けてください 〇個人番号を利用できる事務については、番号法によって限定的にさだめられており、事業者が個人番号を利用するのは、 主として源泉徴収票及び社会保障手続書類に従業員等の個人番号を記載して行政機関及び健康保険組合等に提出する場合である。 現在の所、雇用保険関係、税金の年末調整の提出書類に個人番号記載欄が付いた見本がすでに出来上がっています。 事業主の方はそろそろ準備に入って行かれた方が良いと思います。   事務所より一言 社労士通信の更新が滞りました。 個人的な事情でなかなか作成が出来ませんでした。 これからは、通し№で皆様に役立つ情報をお伝えいたします。  

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2014年5月号:助成金不正受給と社労士他  『社長業について その3』

詐欺罪に問われることも! 助成金(両立支援助成金)の不正受給事例   ◆「不正受給」に該当するケースとは? 助成金の支給申請に際して、事実通りに申請してしまうと助成金を受給できなかったり、期待した額の助成金を受給できなかったりするため、存在しない書類や実態と異なる書類を作成・提出して助成金を受給しようとすることは「不正受給」に当たります。 実際に助成金を受給しない場合であっても、申請するだけで不正受給になるため注意が必要です。 以下では、厚生労働省から発表されている「両立支援助成金」の不正受給事例をご紹介します。   ◆不正受給事例(1) 事業主Aは、助成金の申請にあたり「事業所内保育施設の建設に要した費用の領収書の写し」の提出が必要でしたが、助成金に詳しい外部者から「他の事業主はみんなこのようにかしこくやっている」と助言を受け、建設会社に依頼して実際に支払った金額よりも高額な額面の領収書を発行してもらい、本来受給できる金額より多額の助成金の支給を受けました。 後日、会計検査院の調査において不正の事実が判明して指摘を受けたため、事業主Aは助成金を全額返還するとともに、雇用関係助成金の3年間の支給停止決定を受けました。 さらに、労働局により詐欺罪(刑法246 条:10 年以下の懲役)で刑事告発され、警察の捜査を受けて書類送検されました。   ◆不正受給事例(2) 事業主Bは、助成金の申請にあたり「対象労働者の出勤簿の写し」の提出が必要でしたが、もともと出勤簿を作成していませんでした。 このため、助成金に詳しい外部者が出勤簿を作成し、その写しを添付して支給申請しましたが、記載内容が実際の出勤状況と違うことが判明したため、事業主Bの助成金は不支給となり、雇用関係助成金の3年間の支給停止決定を受けました。   「非正規社員の正社員化」の動きと「限定正社員」   ◆小売、流通、外食を中心に増加 先日、衣料専門チェーン「ユニクロ」を運営する株式会社ファーストリテイリングが、現在約3万人いるパート社員・アルバイト社員のうち、半数以上の約1万6,000人を今後2~3年かけて正社員に登用していくことを発表したとの報道がありました。 同社以外にも、流通業や外食産業などにおいて、大手企業を中心に「正社員化」の動きが広がっているようです。   ◆「正社員化」のねらい この「正社員化」の広がりの背景には、以下のような企業の思惑があるようです。 ・「経験豊富な非正規社員のノウハウを活用したい」 ・「待遇改善によって優秀な人材を定着させたい」 ・「景気回復の影響による人材不足状態を解消したい」 ・「社員のやる気をアップさせて業務の質を高めたい」   ◆「限定正社員」の活用 なお、ファーストリテイリングでは、勤務地限定(店舗限定)で働くことができ、雇用期間に定めのない「限定正社員」の仕組みを取り入れるとのことです。 この「限定正社員」は、正社員と非正規社員の中間に位置する雇用形態であり、勤務地の限定のほか、職種・職種や労働時間などを限定するものもあり、最近では「多様な正社員」や「ジョブ型正社員」などとも呼ばれています。 現在、「限定正社員」の仕組みを積極的に取り入れていこうとする政府・厚生労働省の動きがありますが、何らかの「限定」があることにより、通常の正社員よりも待遇(賃金水準)が低く設定されることが一般的です。   ◆「限定正社員」に対する懸念 限定正社員には、育児や介護が必要なため「自宅の近くでしか働けない」「長時間は働けない」等、正社員として働くことに何らかの制約のある人に対して「正社員」の道を開くメリットがあるとされています。 しかし、「賃金を低く抑えるための口実として使われる」「通常の正社員よりも解雇されやすい」などといった懸念の声も挙がっています。 …

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ブラック企業:社労士通信2013年12月号

「ブラック企業」の定義と労動行政の対応 ◆「ブラック企業」の定義は? 最近、マスコミ等で大きな話題となっている「ブラック企業」ですが、「労働法令を遵守せず、労働者の人格を著しく無視したかたちで働かせている企業」、「違法な長時間労働や賃金不払い残業があり、離職率が極端に高い企業」、「就職したらひどい目にあうので避けた方がよい企業」などと定義されているようです。   ◆勤務先はブラック企業? 先日、連合総研が10月初旬に実施した「勤労者の仕事と暮らしについてのアンケート調査」(首都圏・関西圏に居住し民間企業に勤務する20~64歳の人2,000名が回答)の結果が発表されました。 この調査で、「あなたの勤め先は『ブラック企業』にあたると思いますか」と質問したころ、「そう思う」と回答した人は17.2%でしたが、若者世代ほど「そう思う」と回答した割合が多い結果となりました(20代:23.5%、30代:20.8%、40代:15.4%、50代:11.2%、60代:9.0%)。   ◆厚労省が実施した電話相談の結果 厚生労働省では「ブラック企業」という言葉は使わずに、「若者の使い捨てが疑われる企業」と呼んでいますが、今年9月を「過重労働重点監督月間」と定め、過重労働が行われている疑いのある事業所に対して重点的に指導・監督を行いました。 同省が9月1日に実施した無料電話相談には全国から1,042件の相談が寄せられたとのことで、相談内容(複数回答)は上位から、(1)賃金不払残業(53.4%)、(2)長時間労働・過重労働(39.7%)、(3)パワーハラスメント(15.6%)だったそうです。 なお、相談者が勤務している業種は、「製造業」(20.4%)と「商業」(19.9%)で約4割を占めました。   ◆労基署の調査、監督指導 厚生労働省は「労働条件の確保・改善対策」を重点施策として挙げており、今後も、労働法令を遵守しない企業に対する監督指導の強化傾向は続くものと思われます。 労働基準監督署による調査や監督指導は、労働者や退職者からの情報提供をきっかけに行われるケースも多いので、労働者等から「ブラック企業」とのイメージを持たれることのないよう、労務管理上、万全の対策をとっておく必要があります。   社員にも知らせておきたい年金の手続き ◆情報提供で従業員満足度をアップ 年金の手続きについては、本人の受け取る年金額にも影響してきますので、最終的には年金事務所での確認が必要になります。しかし、制度の概要や手続きの流れ、法改正の話題などを従業員に案内しておくことは、従業員満足度を上げる意味でも有効な手段です。 現在、政府広報オンラインのホームページでは、『知っておきたい「年金」の手続き』として、特に「第3号被保険者の不整合記録問題」の対応に関する手続きなどがまとめられていますので、こうしたものを参考にするとよいでしょう。   ◆「不整合記録問題」とは? 会社員や公務員(第2号被保険者)の配偶者で第3号被保険者であった主婦・主夫の方も、第2号被保険者の方が亡くなったり、退職した場合や自分の年収が130万円以上となったりした場合には、第3号被保険者の資格を失い、第1号被保険となります。 その場合、居住する市(区)町村の年金窓口で「第3号」から「第1号」になるための切替えの届出を行い、保険料を自分で納めることが必要となります(なお、「第3号」の主婦・主夫の方が、会社などに就職し、勤め先の厚生年金保険または共済組合などに加入した場合は「第2号」となります)。 しかし、この「第1号」への切替えの届出を行わなかったため、実態とは異なり年金記録上は「第3号」のままになっていることが後で判明するケースが問題となっています。 ◆約47.5万人が該当との推計 時効(本来届出が必要な時点から2年)により保険料の納付ができない「未納期間」が生じ、その結果、受け取る年金額が少なくなったり、受給資格期間を満たせず年金が受給できなくなったりするおそれがあり、約47.5万人(うち、年金受給者約5.3万人、被保険者など約42.2万人)が該当すると厚生労働省は推計しています。 この問題に対応するため、今年7月に法律が改正され、「第3号」から「第1号」への切替えの届出が2年以上遅れたことのある方が所定の手続きを行えば、「未納期間」を年金の「受給資格期間」に算入できるようになりました。また、最大10年分の保険料の納付ができるようになりました。   ◆小冊子やチェックリストの活用でトラブルを防ぐ 定年退職などで会社を離職する方に、社会保険や税金等に関する必要な手続きをまとめた小冊子などを手渡すと、退職時のトラブルを防ぐ役に立つでしょう。 また、会社が行う手続きもチェックリストなどを使って漏れのないようにしたいものです。自社のチェックリストは法改正を反映しているか、定期的にチェックが必要です。   お困りのことが御座いましたら、こちらからお気軽にご相談下さい。

2014年7月号:人手不足に関して  『社長業について その5』

平成26年版「パートタイマー白書」にみる人材の過不足感  ◆人材の過不足感に関する調査 「パートタイマー白書」は、株式会社アイデムにより平成9年度から刊行されている調査報告書です。 この中に、人材の過不足感に関する調査結果があります。この調査は、正社員と非正規雇用の従業員(パート・アルバイト、契約社員、派遣社員)を雇用している企業に対して実施しています。   ◆若年層の正社員が不足 自社の従業員に対する過不足感を雇用形態別・年代別に問うと、いずれの形態においても、若い年代で不足感が高いようです。特に、正社員においてその傾向は顕著で、20代正社員が「不足」とした企業は56.3%となっていますし、30代正社員では47.3%と半数近くに上ります。 他の年代の正社員に対する不足感が40代:22.0%、50代:8.3%、60代以上:4.2%となっているのと比較すると、若年層の不足感よくわかります。 また、業種別では、「建設業」「運輸業」の約6~7割の企業で、20代・30代の正社員が「不足」していると回答しており、若手人材の獲得は大変なようです。   ◆パート・アルバイトの年代別過不足感 パート・アルバイトでも、若い年代のほうが、不足感が強い(20代:25.2%、30代:20.5%)ですが、正社員の不足感のほうがより強いようです。 業種別に見ると、「飲食店、宿泊業」「生活関連サービス・娯楽業」では、20代パート・アルバイトが「不足」していると回答した企業が約5割に上り、他の業種よりも割合が高くなっています。   ◆契約社員・嘱託社員/派遣社員の年代別過不足感 契約社員・嘱託社員については、どの年代に対しても「ちょうどよい」という回答が8割を超えています。派遣社員についても約9割の企業が「ちょうどよい」との回答でした。 非正規労働者を正社員化する企業が多くなってきていますが、人材不足への対応として、特に若年層の囲い込み競争は今後さらに激化しそうです。   人手不足産業でも採用できた事業所とできなかった事業所の違い  ◆医療・福祉、建設業における人手不足が深刻 厚生労働省が発表した「人手不足産業における高卒求人の充足状況」によると、平成25年度の高卒者向け求人は、製造業、医療・福祉、建設業、卸売・小売業などで多かったですが、これらの産業の充足率をみると、医療・福祉で31.3%、建設業で34.2%と低く、人手不足の深刻化による充足率の向上が課題となっています。   ◆採用できた事業所・できなかった事業所の差は? 充足率が低かった医療・福祉と建設業において、高卒求人票を用いて採用できた事業所とできなかった事業所の違いをみると、医療・福祉では、早期(平成25年7月末まで)に求人を出した事業所の割合が、採用できた事業所で77.2%、採用できなかった事業所で 58.7%となり、差が見られました。 また、求人票に「採用・離職状況」の記載があった事業所の割合は、採用できた事業所で73.6%、採用できなかった事業所で60.4%となっています。 建設業でも、早期に求人を提出した事業所の割合については、採用できた事業所(69.2%)が採用できなかった事業所(45.1%)を大きく上回りました。 これらのことから、「早期の求人提出」、「求人票における積極的な情報提供」が充足に大きな影響を与えている要因と考えられます。   ◆なぜ人が集まらないのか? 高校の進路指導担当教諭に対して、充足率の向上が課題となっている3産業(建設業、医療・福祉、宿泊業・飲食サービス業)に生徒が応募しない理由を聞いたところ、宿泊業・飲食サービス業では、「休日が少ない・労働時間が長い・勤務時間が不規則等、労働時間の問題」、建設業と医療・福祉では、「仕事がきつそう・面白くなさそう等、仕事内容(職種)の問題」という回答割合が高かったようです。   ◆充足率向上のために必要な改善点 必要な改善点について、高校の進路指導担当教諭からの意見をまとめると、「医療・福祉」では、給与・休日・労働時間等労働条件を改善し、社会的評価・イメージを向上させる取組み、日勤・夜勤といった就業規則が不規則でも生活のリズムが崩れない配慮、OJTの充実と資格取得までの制度や支援の充実などが挙げられました。 「建設業」では、将来性やスキルアップのビジョンを示すことや、3Kのイメージを払拭する取組み、労働条件の改善、「宿泊業・飲食サービス業」では、長時間拘束される労働条件改善のための交代制シフトの導入や正社員としての仕事内容とキャリアアップの将来像を示すことなどが挙げられました。 事務所より一言 牛丼、居酒屋チェーン等では人手不足が叫ばれています。しかし建設業界ではもっと以前から職人さんの高齢化による引退で不足感がありましたよ! 農業から始まり、林業、建設とこれからの日本を暗示しています。 『社長業について その5』 創業者、2代目社長などの中小企業経営者は会社の株を所有している親族であり、常に会社の人に見られています。 ただ、ブランド企業でもなく、高給を支払えるわけでもないので、辞めていく従業員も多いので、どうしても身内に働いてもらうようになります。身内が役員になり、自分勝手な行動をとるようになると家族の仲が悪くなり、会社の経営にはよろしくなくなってきます。 …